世界最長のナイル川は、主に2つの川から成り立っている。

ケニアとタンザニア、ウガンダの国境にあるビクトリア湖を水源とする白ナイル川と、エチオピアのアビシニア高原にあるタナ湖を水源とする青ナイル川だ。
青ナイル川の長さは白ナイル川よりも短いものの、年間水量を考えると、全体の56%となり、白ナイル川を凌駕する。

その青ナイル川で最大の滝は、水源のタナ湖から約30キロメートル下流に位置し、幅は400メートル、高さは45メートル、アフリカでは最大級の滝の一つとなる。
一般に青ナイルの滝と呼ばれているが、エチオピアではティシサット(Tissisat)といわれており、「偉大なる噴煙」を意味する。

エチオピアの雨期は5月からはじまり9月半ばまでつづく。その間、青ナイル川の水量はナイル川全体の70%にも達する。この雨期の水が、ヘロドトスをして「エジプトはナイルの賜物」といわしめ、あの古代エジプトの繁栄をもたらしたのだ。

私が最初にここ訪れたのは、まさに雨期真っただ中の6月。

合羽を着こみ、山を登り始める。
地元の人たちはごつごつした岩が現れている地面を、はだしでひょいひょいと歩いていく。

歩き始めてすぐに、石造りの橋が見える。
17世紀、ポルトガル人によって造られた橋であり、エチオピアで最初の石造りの橋だ。
いまだに人々の日常を支える橋であり、雨にけぶる中に見える橋は緑の草に覆われて、何百年も昔の世界にタイムスリップしたかのようだ。

橋をわたり、さらに滑りやすい山道をよたよたと登る。
荷物を頭に担いだ人たちがどんどん追い越していく。岩がごつごつの道を、慣れているとはいえはだしで歩くのは痛くないのだろうか。この岩は、私のスポーツ靴の厚底を通しても感じられるほどにとがっている。

山の斜面では放牧した牛たちが草をはむ。
樹上には野生の猿が飛び交っている。

滑りやすい山道を登ること40分。
息が相当あがってきたころ、やっと滝が見えてくる。

雨期のため水量がましており、遠くからでも滝つぼに落ちる水しぶきのすさまじさがわかる。

青ナイル川という名前は、白ナイル川よりも水が透明なために名付けられたのだが、この雨期の青ナイルはその圧倒的な水量で流域の岩を削り、泥をさらってきたために、茶色く濁り、その水しぶきもみごとに泥色だ。

滝の正面からすこしはずれたところで、女性がお湯をわかしてコーヒーを入れていた。おみやげ物のスカーフをつっている。
ここで一杯コーヒーを飲んでから、ゆっくりと山を下りることとしよう。
40分の山登りは、運動不足の私にはずいぶんと過酷なものだった。

*** 青ナイルの滝をみるのには、もうひとつのルートがある。そちらのルートだと、これほどの山道を登ることなく、平坦な道を15分ほど歩き青ナイルの滝を見ることができる。吊り橋をわたれば、滝を正面から見ることもできる。

(Y.I)

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青ナイルの滝
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