カイロからアレキサンドリアへの観光は通常日帰りでも十分可能ですが、地中海沿岸にはアレキサンドリア以外にもいくつも見どころがあります。アレキサンドリア市内観光に加えて、少し遠出をして別の場所も楽しんでみるのはどうでしょうか?
アレキサンドリアのすぐ近くとアレキサンドリアより西の地中海沿岸のみどころをいくつかあげてみたいと思います。
まずは、アレキサンドリア市内観光にプラスして一日でまわれるぐらいの場所で…
アブー・キール(アブー・イール):
エジプト遠征を開始、エジプトに上陸したばかりのナポレオン率いるフランス艦隊が、ホレーショ・ネルソン率いるイギリス艦隊に大敗を喫した1798年8月のアブキール湾の戦い(ナイルの海戦)の舞台となった場所です。その海戦の一か月前、ナポレオン率いるフランス軍がエジプトに初上陸したのもこの地でした。
アレキサンドリアの東の端にありますので、市内観光がひと段落ついてからアブー・キールの老舗シーフードレストランでアブー・キール湾の眺めと魚介を楽しみながら、ナポレオンとイギリスの戦いなど思い起こしてみるのはどうでしょうか?時期が合えばウニを味わうこともできるかもしれません。
アブ・メナ:
アレキサンドリアから南西45kmのところにある、キリスト教期(コプト期)の都市遺跡の一つです。1979年に世界遺産の一つとして登録されていますが、同時に地盤の脆弱性の問題などから2001年に危機遺産にも登録されています。
ここは、3世紀末あるいは4世紀初めにローマ帝国の迫害にあい殉教したと言われる聖メナス(マル・メナ)の墓を中心に形成された都市で、キリスト教期(コプト期)エジプトで最大のキリスト教巡礼地の一つでした。しかしながら、イスラーム勢力がエジプトに入って以降、このまちは破壊されてしまい、再度この地に光が当てられたのは20世紀初頭に発掘が始まってからとなります。
この遺跡の横には1959年建立のマル・メナ修道院とカテドラルがあり、コプトの人々が礼拝などに訪れている様子や、修道士の生活などを垣間見ることができます。
アレキサンドリアで一泊して、もっと足を伸ばすのであれば…
ロゼッタ:
プトレマイオス朝期以来の港町ですが、とくに16世紀オスマン朝期以降19世紀ごろまではエジプトとトルコを結ぶ重要な貿易拠点として機能しており、アレキサンドリアよりも栄えていました。
そういったこともあり、まちには17~19世紀に建てられた赤レンガと黒レンガの組み合わせが特徴的な建物がいくつも残っています。そのうちのいくつかは公開されていて中を見学することができます。
また、このロゼッタのまちの北にあるカーイトベイの要塞からロゼッタ・ストーンが発見されました。ロゼッタ・ストーンはシャンポリオンによるヒエログリフ解読の鍵となった石碑で、現在は大英博物館に収蔵されています。
この要塞には、ロゼッタストーン以外にも、デルタ地方の古代エジプトの遺跡から持ってこられたと思われる石が建材としていくつも使われています。要塞の中でヒエログリフなど古代エジプトの痕跡を探してみるのはどうでしょうか?
エル・アラメイン:
第二次世界大戦中の1942年の夏から秋にかけて行われたエル・アラメインの戦いの舞台となった土地です。エル・アラメインの戦いでは、それまで物量の点で連合国側に劣るも北アフリカ戦線で連勝を続けていたドイツのロンメル将軍率いるドイツ・イタリアの枢軸国軍が、モントゴメリー将軍率いる英連邦軍により撃退されました。これは北アフリカ戦線の大きな転換点で、これ以降枢軸国軍は連合国軍により防衛線を次々と突破され、北アフリカから姿を消すこととなります。
エル・アラメインには、この戦いに関するスポットとして、軍事博物館、英連邦軍戦没者墓地、ドイツ軍戦没者墓地、イタリア軍戦没者墓地があります。
マルサ・マトルーフ:
エジプト人の夏の避暑地の定番の一つです。アレキサンドリアのまちなかで見るのとは全く違う鮮やかに青く透き通った海と白い砂浜が広がっています。
マルサ・マトルーフから14kmほど離れた場所にクレオパトラ・ビーチというビーチがあります。かつてクレオパトラはこのビーチのある湾のあたりに宮殿を持っており、アントニウスとともに水遊びを楽しんでいたと言い伝えられています。彼女が水遊びをしたという場所は、岬の岩が削られてプールのようになっており、現在はクレオパトラ・ハンマーム(風呂)と呼ばれる観光スポットとなっています。ただし、この周囲は岩だらけでかつ波も強いため、実際にはここで泳ぐことはできません。
また、マトルーフ市内にはマトルーフ博物館があり、そこではマルサ・マトルーフ地域の発掘調査で出土した考古資料が展示されています。
さらに、市内からほど近い岬にはエル・アラメインの戦いの際にロンメル将軍が指令本部として使用した洞窟があり、ロンメル博物館として公開されています。
避暑客で混み合いますが、マルサ・マトルーフを訪れるのであれば、海を満喫できる夏がベストシーズンです。ビーチリゾートということもあり、冬季は色々なものがクローズしている可能性があります。